茨城県岩井市幸神平33
株式会社モンテール つくば工場
「油脂系食品製造残渣リサイクルシステム」
モンテールつくば工場は、新鮮な自然の恵みを活かした洋菓子をより早くお客様にお届けするために、つくば山麓に平成9年に竣工・生産開始した工場である。つくば工場は、(1)食べる人にやさしく、作る人に優しく、環境に優しい21世紀を展望する自然隣接型工場、(2)排出抑制Reduce /再使用Reuse /再利用Recycleの未来を見据えた環境先進工場を目指している。
油脂系食品製造残渣リサイクルシステムを構築するまでの取り組の経緯を図1に示す。リサイクルシステムを1社単独で構築することは困難であるため、当社企業理念に賛同戴いた松本聰・東京大学名誉教授、日立那珂エレクトロニクス株式会社(東茨城郡内原町)、関祐二・農業コンサルタントの技術支援を戴き本リサイクルシステムの構築を行なった。
本リサイクルシステム構築を平成12年1月に着手したが、当時、油脂系食品製造残渣は、乾燥による飼料化、醗酵による堆肥化が困難であり、そのほとんどが焼却処理されていた。油脂系食品残渣の醗酵分解が困難な理由として、(1)粘性が高く醗酵処理物が塊状になってしまう、(2)油脂が酸化して酸性になってしまう、ことが知られていた。まず、1日あたり10kg程度の油脂系食品製造残渣を用いて発酵処理技術の確立を行なった。(1)醗酵副資材にもみがらくん炭を混合すること、(2)弱アルカリ性の醗酵活性材を添加することで醗酵分解が進むことを確認した。(平成12年8月完了)次に、1日あたり100kgの実流規模で、最適醗酵条件(温度、水分、酸素、pH)を見出した。(平成12年9月完了)
平成13年10月にリサイクル装置(1日あたりの醗酵処理能力300kg)を導入・稼動開始した。図2にリサイクル装置の構成を示す。
そして、醗酵処理物のリサイクルを平成13年11月から実現した。
醗酵処理物のリサイクル先は、まず大規模有機農家(鹿島市)から開始した。(平成13年11月)さらに、醗酵処理物のリサイクル先の開拓を行い、平成14年10月からは、培養土メーカ(鹿沼市)へも納入を開始した。
図4に油脂系食品製造残渣リサイクル量の推移を示す。平成13年11月から平成14年9月までは、醗酵処理物のリサイクル先が有機農家1戸だけであったため、1ヶ月あたり3トン(1日あたり100kg)のリサイクル量となったが、醗酵処理物リサイクル先として培養土メーカを開拓した平成14年10月以降は、リサイクル装置の最大能力である1ヶ月あたり9トン(1日あたり300kg)のリサイクルが可能となった。平成14年に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)が施行され、平成18年までに20%の発生抑制、リサイクルまたは減量が義務付けられた。当社の動植物性残渣の全排出量は年間で約400トン、1ヶ月あたり33.3トンであるので、該当量は1ヶ月あたり6.7トンになるが、平成14年10月以降のリサイクル量は1ヶ月あたり9トン(27%)であり、これをクリアした。
表1にリサイクル装置処理前後(油脂系食品製造残渣および醗酵処理物)の成分を示す。油脂系食品製造残渣の粗脂肪は16.3%と高いが、醗酵処理物は3.5%となり、リサイクルの上限と言われる10%をクリアしている。また、醗酵処理物の窒素、りん酸、加里は1%以下と低く、化学肥料で肥満ぎみの農地の土壌改良材に最適である。さらに、塩分も0.3%と低く、塩害を起こす恐れもない。
図5に今後、当社が目指す完全循環型食品リサイクルシステムを示す。
現在は、醗酵処理物を有機農家または培養土メーカに納入するまでのリサイクルであるが、醗酵処理物を近隣農家に届けて畑に混ぜ、土壌改良されたその畑でさつまいも等の農作物を作り、それらの農作物を洋菓子の原料として使用する、完全循環型食品リサイクルシステムの構築を目指して行く。