鹿島選鉱株式会社
亜鉛を含む鉄系ダストより亜鉛原料と製鉄原料の製造

その他知事が特に優良と認める事業部門

茨城県鹿嶋市光3番地
鹿島選鉱株式会社
[日本標準産業分類番号 F2629]
「亜鉛を含む鉄系ダストより亜鉛原料と製鉄原料の製造」


1. 事業の概要

当社は、住友金属工場株式会社鹿島製鉄所の中で、スクラップ・スラグ・ダストの所内リサイクル処理を行っています。この中で特にダストのリサイクル処理技術は、当社独自の技術であり、国内外の注目を集めています。製鉄所では、鉄を含む集塵ダストが大量に発生します。一般にこれらのダストは製鉄原料に戻されますが、亜鉛等の非鉄金属を含んだダストは、そのままでは製鉄原料に使用できないため廃棄物となってしまいます。当社では、ロータリーキルンを用いて、このような亜鉛を含んだ鉄系のダストを鉄と亜鉛に分離し各々を製鉄原料及び亜鉛製錬原料として再利用するシステムを確立しました。現在では、色々な産業から排出される鉄を含む廃棄物より製鉄原料と亜鉛精錬原料を生産しています。このシステムでは、二次廃棄物は一切発生しないため、パーフェクトリサイクルシステムと呼んでいます。


2. 再資源化の取り組みの内容

高炉を持つ大型製鉄所では、亜鉛を含む鉄系集塵ダストが大量に(10万トン/年)発生します。このダストを再利用するため、昭和50年4月よりロータリーキルンを用いて亜鉛と鉄を分離する技術開発に取り組みました。同時期鉄鋼各社も同様の技術開発に取り組みましたが、経済的にかつ安定して分離処理することができずに昭和60年代には、各社とも開発を中止しました。当社も、色々苦労はありましたが、下に示すような改善を実施することにより技術を確立しました。鹿島製鉄所が、他の製鉄所と比べて、非常に高いダストのリサイクル率を達成しているのもこの技術によるものです。

これまでの主な技術課題と対策

(1)キルン内部の付着物生成防止
  1. キルン内部温度監視強化と温度制御(炉内温度の連続画像処理他)
  2. レンガ材質改善による付着防止(アルミナ系→炭化珪素系)
  3. 原料配合管理強化による溶融温度の低下防止(Al203,CaO,SiO2等の配合比率の安定化)
(2)脱亜鉛率の向上対策
  1. 原料配合管理強化による原料中カーボンの安定(カーボン迅速分析計の導入)
  2. 高精度原料切り出し装置の開発
  3. 原料粒度管理強化

現在では89社の排出元から、産業廃棄物の受け入を行っており、リサイクル処理を行っております。

平成12年度廃棄物受け入れ実績
業種 排出元数 受け入れ量
t/年
産業廃棄物の種類
楳塵 燃え殻 汚泥
発電所 2 3828  
鉄鋼(電気炉) 5 3078  
タイヤ製造 3 2802
自動車 9 2403    
溶融亜鉛鍍金 19 1376    
その他 52 8805    
合計 89 22302

3. 廃棄物の成分及び有価物の成分

廃棄物には種々の有価金属が混合しています。この成分を分析して、リサイクルの可否を決定します。

処理廃棄物と製品の成分分析(単位%)
    TFe Zn C SiO2 CaO CI Pb
原料 廃棄物A 18.4 5.9 17.8 7.7 15.7 0.08 -
廃棄物B 21.1 31.8 0.4 - - 6.67 2.5
廃棄物C 34.0 24.7 2.8 1.5 0.4 0.10 -
廃棄物D 42.0 0.5 - - 4.3 0.06 -
製品 製鉄原料 69.3 0.20 1.5 5.3 12.0 0.03 0.01
亜鉛原料 4.9 57.9 0.8 - - 3.6 2.8

4. キルン内の主な反応

キルンの内部では、1250℃から1300℃の高温で次の科学反応により鉄と亜鉛を分離します。

反応1 カーボン燃焼によるCO発生 2C+O2=2CO
反応2 COによる酸化鉄の還元 Fe2O3+3CO=2Fe+3CO2
反応3 COによる酸化亜鉛の還元蒸発 ZnO+CO=Zn(g)+CO2

5. 再資源化の概要(パーフェクトリサイクルシステム)

6. 処理実績
(1)最近3年間の操業実績
  キルン処理量 再資源化量
製鉄所内ダスト 製鉄所外廃棄物 製鉄用原料 亜鉛製錬原料
t/年 t/年 t/年 t/年
H10年度 100276 20024 79600 5200
H11年度 99975 20625 76700 5400
H12年度 99998 22302 72000 4800
平均 100083 20984 76100 5133

表よりロータリーキルンは年間約12万トンの廃棄物を処理し、その結果約8万トンの資源を回収したことになります。

(2)ロータリーキルンによる廃棄物処理実績(昭和50年4月〜)

図はキルン稼動開始から現在までの廃棄物処理量(累計)をあらわしています。昭和50年4月にスタートし、26年間で約250万トンの廃棄物を処理しました。言い換えればこの設備は250万トンの最終処理地の役目を終え、今後も継続的に処分を行うことが出来る設備でもあります。


7. 今後の構想

産業廃棄物を資源に変える。これは21世紀に生きる私達の責任です。埋め立て処分地が少なくなってきた昨今、当社のこの技術に対する社会的ニーズは、ますます大きくなっています。今後、更に幅広い分野の産業廃棄物を調査し、できるだけ多くの廃棄物を資源に変えるように努めてまいります。

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