茨城県鹿嶋市光3番地
住友金属工業株式会社 環境・プラントエンジエアリング事業部
[日本標準産業分類番号 F2978]
「住友金属シャフト炉型直接ガス化溶融炉の開発」
廃棄物に関わるダイオキシン問題及び焼却灰の最終処分地問題の解決、さらに廃棄物から高効率にエネルギー回収したり、マテリアルリサイクルすることを目的とした資源循環型社会の構築のために、廃棄物の高度処理が可能なガス化溶融炉が時代のニーズとともに注目されている。当社環境・プラントエンジエアリング事業部は、一般廃棄物のみならず各種の産業廃棄物を、高濃度酸素を用いて高圧ガス化改質し、ダイオキシン類を含まない清浄化された燃料ガスを製造するとともに、廃棄物中の不燃物を高温溶融して、無害化かつ高品質の溶融スラグを製造できるサーマル及びマテリアルリサイクルを両立したガス化溶融炉を、国内で初めて国産技術により開発に成功した。この結果平成12年12月に(社)全国都市清掃会議による廃棄物処理技術検証を完了し、実用レベルの技術であると評価された。
平成10年4月鹿島製鉄所構内に実証プラントを建設し、運転を開始した。住友金属式シャフト炉型直接ガス化溶融システムは、図1に示す3点の基本コンセプトを持っている。これを実現するために、シャフト炉型の高温ガス化溶融炉と急冷減温塔に特徴がある。
図2にプロセスフローを示す。これは本システムの標準型フローを示すが、産業廃棄物の中で含有水分の比較的低い廃プラ等の場合は、乾燥無しにガス化溶融に装入される。また灰や土壌のように不燃物主体の廃棄物の場合は、コークス等の燃料を利用して溶融する。本システムで廃棄物から製造した燃料ガスは、高効率のガスエンジンで発電するのが良いが、その他ガスタービンやボイラー等で電気あるいは熱回収することも可能である。
(a)高濃度酸素を用いたシャフト炉型高温ガス化溶融を、国産技術により国内で初めて開発した。廃棄物を事前乾燥し高濃度酸素を使用することで、カロリーの高い燃料ガスを製造できた(表2)。100t/日規模の実機ならば、熱量は8400kj/m3Nを超えると見積もられる。この燃料ガスをガスエンジンに利用すれば、従来の蒸気タービン発電よりも10%以上の高い熱効率を達成できる(表3)。
CO | CO2 | H2 | N2 | 熱量 |
---|---|---|---|---|
33.2 | 25.5 | 23.1 | 18.2 | 6704kj/m3N |
ガスエンジン発電 | 25 |
蒸気タービン発電 | 5〜15 |
(b)従来はコークス、重油または電力を熱源として汚泥、汚染土壌及び焼却灰等の溶融無害化処理が行われていたが、本方式では廃棄物から製造された固形燃料(RDF)を使用可能とした。
(a)廃棄物の減量化効果
最終処分しなければならない副産物は飛灰のみであるので、最終処分容量率=0.17%となった(表4)。したがって1/200以下に減容化されたので最終処分地容積を99%以上削減できる。
最終処分容量率 | 0.17 |
最終処分容量率 | 1.80 |
(b)省資源効果
溶融炉で製造された溶融スラグは、炉外で冷却されて写真2に示すような水砕スラグまたは徐冷スラグとして回収された。このスラグは重金属類が非常に少なく、かつ溶出しないことを確認している。(表5及び表6)
写真2 スラグ
pb | Cd | T-Hg | Cr6+ | As | Se | |
---|---|---|---|---|---|---|
実績値 | <0.01 | <0.001 | <0.0005 | <0.04 | <0.002 | <0.002 |
基準値*1 | <0.01 | <0.001 | <0.0005 | <0.05 | <0.01 | <0.01 |
*1 環境庁告示平成3年第46号
上記の結果を受けて、本スラグがコンクリートの骨材及び路盤材等の用途に利用できることを実証した(表7)。特に、路盤材への利用においては下層路盤のみならず上層路盤にも適用できることを確認した(表8)。
単位容積質量試験(kg/L) | 表乾比重(-) | 絶乾比重(-) | 吸水率(%) | |
---|---|---|---|---|
実績値 | 1.588 | 2.88 | 2.88 | 0.26 |
基準値 | 1.45以上 | - | 2.5以上 | 3.5以上 |
区別 | 単位容積試験 (kg/m3) |
修正CBR (%) |
すりへり試験 (%) |
水侵膨張試験 (%) |
|
---|---|---|---|---|---|
上層 路盤材 | 実績値 | 1844 | 121 | 36.6 | 0.25 |
規格値 | 1500以上 | 80以上 | 50以下 | 1.5以下 | |
下層 路盤材 | 実績値 | 1789 | 131 | 39.4 | 0.17 |
規格値 | - | 30以上 | - | 1.5以下 |
本システム清洗浄化した燃料ガスを、従来の蒸気タービン発電よりも熱効率の高いガスエンジン発電に利用することで、図3に示すように廃棄物熱量の約1/4を回収可能である。
茨城県と当社の共同研究事業として、ダイオキシン類及び重金属類に汚染された掘り出 し焼却灰、土壌及び汚染の溶融無害化処理を行った。その結果当社ガス化溶融炉を用いた高温溶融法により、上記汚染物から無害でかつ有用なスラグに変換できることを実証した(表9及び表10)。この方法に従えば廃棄物焼却施設周辺の汚染された環境の改善を図ることができる。
単位 | 汚染掘り出し焼却灰 | 汚染土壌 | |||
---|---|---|---|---|---|
試料1 | 試料2 | 試料A | 試料B | ||
原料 | pg-TEQ/g | 3000 | 390 | 82 | 100 |
スラグ | pg-TEQ/g | 0.00057 | 0.0036 | 0.094 | 0.081 |
単位 | 汚染掘り出し焼却灰 | 汚染土壌 | |||
---|---|---|---|---|---|
試料1 | 試料2 | 試料A | 試料B | ||
原料 | ppm | 340 | 180 | 380 | 100 |
スラグ | ppm | <20 | 20 | 20 | 20 |
平成13年から15年までの3カ年計画で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) の補助金による開発を実用化に向けて開発した。
今後水素燃料電池への適用、ジメチルエーテル(DME)製造等への化学原料として、精製ガスを利用する。